COLUMN
No.38
『シンプルな納まり』と『シンプルに見える納まり』 2005/08/19
『シンプルな納まり』と『シンプルに見える納まり』って、日本語の表現だけみると似ているけれど、実際は全然ちがう。
『シンプルな納まり』とは、材料の性格や特性、規格寸法などをうまく利用したりして、余分なことをせずに合理的、機能的に納めることだと思う。例えば、フローリングを張ってから、カベのボードを貼って、出巾木をつける、なんていう一般的な納まりは、特にムクのフローリングのときは水平方向のフローリングの伸びや縮みなどの動きをボードまたは巾木の下の見えない部分で吸収できるし、出巾木をボードを張った後から打ちつけるのは、ボードの下端(シタバ)の不揃いを隠し、ムクフローリングの反りを上から押える役目もするし、カベの最終仕上げの切り替えを容易にするし、掃除機からカベ仕上げを守ることもする。
一方で建築雑誌なんかで多く、一見『シンプルに見える』、「巾木なし」 の納まりは、上記のような機能や役割を果すものがそもそもないか、あるけれどわざわざ「見えないように」納めている。
上の巾木は一例だけれど、一般的には合理的で機能的なものをなしにすることは、それらの機能や役割を放棄するわけで、結果は見えている。できた当初はいいかもしれないが、数ヵ月後、数年後にはたいていが 「あ~あ、…」 という結果になっている。なんとかもともとの機能などは持たせたままに、『シンプルに見える』ように納めようと思うと、それはそれで結構、頭をひねらないといけないし、別の加工をして『シンプルに見える』ようにしたり、一手間入れたりしなければいけないことが多い。
多くの、『シンプルに見える納まり』のための過程は『シンプルではない』ということ。『シンプルに見える納まり』が悪いわけではないが、『シンプルに見える納まり』は加工や手間が多く、それがコストにも跳ね返ってくることも頭に入れておかなければいけない。それを踏まえた上での、機能もコストも見え方も『シンプル』な納まりが、飾り気もなく、無駄もなく、質素に美しい、本来の『シンプルな納まり』だと思う。
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